ベトナムの個人所得税(Thuế thu nhập cá nhân : 略称 TNCN)の概要
Date: 2025.04.17
ベトナムの個人所得税(Thuế thu nhập cá nhân : 略称 TNCN)の概要
ベトナムの個人所得税(TNCN)は、ベトナム人労働者だけでなく、ベトナムで働く日本人を含む外国人、日本を含む海外からベトナムへ派遣された専門家、ベトナムで現地採用された外国人、短期出張者にも適用されます。そのため、企業や個人にとって税制を正しく理解することは非常に重要です。
以下は、ベトナムの個人所得税に関する重要な6つのポイントです。
1. 居住者と非居住者の定義 – 誰が課税対象になるのか?
2. 個人所得税の課税所得の範囲の決定方法
3. 適用される税率と個人所得税の税率表
4. 個人所得税の計算方法 – 各ケースごとの計算方法
5. 適用可能な免税項目に関する注意点
6. 給与・賃金以外の所得に対する個人所得税の納税義務の判断
本記事では、ベトナムの個人所得税の仕組み や、働く上で知っておくべきポイントを詳しく解説します。
1. 居住者と非居住者の定義 – 誰が課税対象となるのか?
1.1.【居住者とは︖】
以下のいずれかの条件を満たす場合、ベトナムの居住者とみなされます。
a. 滞在期間
ベトナムに183日以上滞在している(暦年内または入国日から連続する12か月間)。
入国日・出国日はそれぞれ1日としてカウントされる。
b. ベトナムにおける恒久的な居所
・ベトナム国籍者:居住場所があり、住民登録がされている。
・ベトナム以外の国籍者:永住カードまたは一時滞在許可証(レジデンスカード)を所持している。
・ベトナムでの賃貸契約:183日以上の賃貸契約がある(ホテル、ゲストハウス、職場の宿泊施設なども含む)。
居住者とみなされるケース
※ベトナムに183日未満しか滞在していない場合でも、他国の居住者であることを証明できない場合は、ベトナムの居住者とみなされます。
証明には居住証明書(Giấy chứng nhận cư trú)が必要ですが、ベトナムと租税条約を締結している国で証明書の発行制度がない場合は、パスポートで滞在期間を証明することも可能です。
1.2.【非居住者とは︖】
上述の居住者要件を満たさない者は、全て「非居住者」扱いとなります。
2. 個人所得税の課税所得の範囲の決定方法
– 居住者: ベトナム国内外の 全所得 が課税対象となり、所得の支払元を問わない。
– 二重課税防止協定を締結している国の居住者: 初めてベトナムに入国した月から契約終了・退職し出国する月までが課税対象となり、領事認証手続きなしで二重課税が回避される。
– 非居住者: ベトナム国内で発生した所得のみ が課税対象となり、所得の支払元を問わない。
3. 適用される税率と個人所得税の税率表
ベトナム個⼈所得税の税率ですが、こちらも納税義務を負う者が、居住者かそれとも非居住者かによって変わってきます。
居住者 :
累進課税⽅式(*以下の表です)非居住者 :
⼀律で20%累進課税率(部分累進税率)
この税率は、事業所得、給与所得、賃金所得 に適用され、ベトナム個人所得税法の第10条および第11条 に規定される課税所得の合計から、以下の控除を差し引いた後に計算されます。
・保険料の支払い:
社会保険、健康保険、失業保険、職業賠償責任保険(特定の職種に適用)。・任意年金基金
・個人所得税法の第19条および第20条で規定される控除額
ベトナム個人所得税率
累進課税率(部分累進税率) VND-USDレート: 25,600/USD
| 課税所得 / 年 | 課税所得 / 月 | 税率 (%) | ||
| (百万VND) | (USD) | (百万VND) | (USD) | |
| ~ 60 | ~ 2,344 | ~ 5 | ~ 195 | 5 |
| 60~ 120 | 2,344 ~ 4,688 | 5 ~10 | 195 ~ 391 | 10 |
| 120 ~ 216 | 4,688 ~ 8,438 | 10 ~ 18 | 391 ~ 703 | 15 |
| 216 ~ 384 | 8,438 ~ 15,000 | 18 ~ 32 | 703 ~ 1,250 | 20 |
| 384 ~ 624 | 15,000 ~ 24,375 | 32 ~ 52 | 1,250 ~ 2,031 | 25 |
| 624 ~ 960 | 24,375 ~ 37,500 | 52 ~ 80 | 2,031 ~ 3,125 | 30 |
| 960 ~ | 37,500 ~ | 80 ~ | 3,125 ~ | 35 |
居住者の課税率について
居住者は、上記の累進課税率に基づき、最低5%~最高35% の税率が適用されます。
ただし、日本人駐在員の場合、ベトナム国内での源泉所得であっても最低5%の税率が適用されることはほぼありません。実際の課税率は、主に25%以上の税率が適用されます。
4. 所得税の計算⽅法
ベトナム個⼈所得税の計算⽅法は、以下の通りです。
(1) 課税所得 = 総所得 – 非課税所得
(2) 課税対象所得 = 課税所得 – 控除額
(3) 納付すべき個人所得税 = 課税対象所得 × 累進税率
* 控除額 = 家族控除 + 扶養控除 + 保険料控除 + その他…
+ 本人控除:1,100万VND/月
+ 扶養控除:1人あたり440万VND/月(扶養親族の定義は本ページを参照)
+ 保険料控除(政府が義務付ける社会保険、医療保険など)
* 非課税所得の一部例
非課税所得は 通達111/2013/TT-BTC(改正後の通達92/2015/TT-BTC) によって規定されており、個人所得税が課されない所得や免税対象となる所得が定められています。
例:
+ 日本人従業員の通勤や出張のための送迎車両費用
+ 日本人従業員の子供がベトナムで通う学校の授業料(授業料のみ対象、その他の費用は課税対象となる場合あり)
+ 日本人従業員がベトナムへ赴任する際の赴任手当
+ 日本人従業員の母国への往復航空券(最大年1回まで)
💡 注意: 上記の項目が労働契約書または会社の内部規則に明確に記載されていない場合、非課税所得として認められない可能性があります。
5. 適用可能な免税項目に関する注意点
留意点
法定代表者の赴任前(出張中)の取り扱いについて
ベトナムへ進出する企業の中には、「非居住者には課税義務がない」と考えている企業様もいらっしゃいますが、非居住者であっても一律20%の課税が適用されるため、ご注意ください。
(ただし、この20%は全世界所得ではなく、ベトナム源泉所得に対するものです。)
例えば、企業がベトナムで土地使用権を取得し、自社工場を建設するケースを想定します。この場合、工場建設の進捗確認や市場調査を目的として、将来的に法定代表者となる予定の駐在員が出張ベースで現地入りすることがあります。
この駐在員はまだ日本の居住者であり、ベトナムでは非居住者とみなされますが、ベトナムで発生する所得に対しては20%の課税義務が生じます。
本来であれば、短期出張者免税申請を行うことで、一時的に訪れる非居住者に対する免税措置を受けることができます。
しかし、実務上、法定代表者となる予定の出張者にはこの申請が認められないケースが一般的です。
そのため、ベトナムで受け取る可能性のある所得を算定し、出張日数に応じた日割り計算で所得税を申告する必要がありますので、ご留意ください。
短期出張者の税務処理について
前述の通り、短期出張者も原則として納税義務が発生します。
工場の立ち上げ時はもちろん、現地法人設立後も、日本本社からエンジニア、品質管理担当者、営業担当者などの専門職が頻繁にベトナムへ出張することが想定されます。
このような短期出張者も、ベトナムでの滞在日数に応じて所得税の課税義務が発生します。
ただし、日越租税条約 に基づき、事前に短期出張者免税申請を行うことで、免税措置を受けることが可能です。
しかし、この短期出張者が将来的にベトナムの法定代表者として赴任する予定である場合、実務上、短期出張者免税申請が認められないケースが一般的です。
そのため、事前に税務処理について十分にご確認いただくことをお勧めします。
(短期出張者社の免税措置要件)
・ 暦年の総滞在⽇数が183⽇未満であること
・ 出張者の給与などは、⽇本法⼈が⽀払っていること
(ベトナム現地法⼈が給与や出張者に対するその他の費⽤を⼀切負担していないことが前提です)
*滞在⽇数の計算上、出⼊国の⽇はそれぞれ1⽇と考えます。
以上、ベトナムのおける個⼈所得税のポイントについて、ご紹介させて頂きました。
次のページでは、「ベトナム⽇本⼈駐在員に掛かる社会保険、所得税」について詳しくご説明致しております。宜しければ、合わせてご覧いただけますと幸いです。
ベトナムの個⼈所得税や当社サービスに関するご質問など御座いましたら、ぜひお気軽に当社へご相談くださいませ。
6. 給与・賃金以外の所得に対する個人所得税の納税義務の判断
✅ 事業所得がある個人:
・事業登録証明書に1名のみ記載 → 納税者はその個人。
・複数名が事業登録証明書に記載(共同経営) → 各個人が納税者。
・家族経営で複数名が関与し、1名のみ登録 → 登録された個人が納税者。
・事業登録証明書なしで事業活動を行っている場合 → 実際に事業を行う個人が納税者。
・事業登録なしの不動産・土地・資産の賃貸 → 資産所有者が納税者(共同所有の場合は各所有者が納税)。
✅ その他の課税所得がある個人:
・共有不動産の譲渡 → 各共有者が納税者。
・不動産管理を委任し、委任者が譲渡権限を持つ場合 → 委任者が納税者。
・知的財産権・技術移転の譲渡で共同所有の場合 → 各所有者が納税者。
・フランチャイズ権の譲渡に複数人が関与 → 各収益受取人が納税者。





