FDI企業のリスク回避のための雇用契約種別の見分け方
Date: 2026.03.20
契約種別を正しく区別する:FDI企業のリスク回避
近年、ベトナムでは労働コンプライアンスの検査が強化され、とりわけFDI企業が重点的に確認されています。労働・傷病兵・社会省(MOLISA)監査局の報告によると、最も多い誤りの一つが雇用契約の種類の誤用であり、これが法令違反、紛争リスク、行政処分につながっています。
外国企業は、ベトナムと本国の雇用契約制度の違いにより、運用上の課題を抱えがちです。
本記事では、現行法に基づく「正確かつ網羅的」なガイダンスを整理し、企業が契約種別を正しく選択してリスクを回避できるよう解説します。

1. ベトナムの雇用契約は2種類のみ
労働法2019により、「季節労働契約(hợp đồng thời vụ)」の概念は廃止されました。現在は次の2種類のみです。
🔹 有期雇用契約(期間の定めのある契約)
・期間:最長36か月
・適用:新規採用、短期プロジェクト、市場テスト目的のポジション
・更新は最大1回まで。その後は無期雇用契約へ切替が必要
🔹 無期雇用契約(期間の定めのない契約)
・終了期限なし
・最も安定した契約形態
・紛争解決において裁判所が優先的に考慮する契約形態
日本企業向けの注意点:
短期契約を連続して複数回(3~4本)締結することは、ベトナムでは適法ではありません。
2. いつ短期契約? いつ長期契約?
✔ 有期雇用契約を使用するケース:
・従業員が入社したばかり
・時的な業務、短期プロジェクト
・人材の効果・適性を評価したい場合
✔ 無期雇用契約を使用するケース:
・業務が安定的で長期継続する性質を持つ
・有期雇用契約を連続2回締結した後
・中核人材として長期コミットが必要なポジション
契約種別を誤ると、懲戒処分や契約解除の場面で企業側が敗訴するリスクが高まります。
3. 試用合意(試用契約)は雇用契約に当たるか?
労働法第24~25条によると:
・試用は雇用契約そのものではない
・ただし、企業は書面による試用合意を必ず作成しなければならない
・試用給与:正式給与の85%以上
・試用期間には上限がある:
+ 180日:管理職・高度専門職
+ 60日:技術・専門職
+ 30日:一般労働
多くの企業が試用合意を雇用契約と分けていない → 雇用契約とみなされ、初日から各種権利・制度の適用対象となるリスクがあります。
4. 雇用契約にはベトナム語版が必須
労働法第14条によると:
・契約書にはベトナム語版が必須
・日本語/英語版を添付することは可能
・紛争時にはベトナム語版が法的根拠となる
FDI企業では二言語契約を用いることが多い一方で、ベトナム語版の内容が他言語版と一致しないケースがあり → 監査や訴訟における重大リスクとなります。
5. 契約種別の誤りはどのようなリスクにつながるか?
❌ 懲戒処分ができない
有期契約の締結が不適切な場合、企業は解除や違反対応の法的根拠を失う可能性があります。
❌ 裁判で企業側が敗訴
2022~2024年の多くの紛争事例では、企業が契約種別を誤用している場合、裁判所は労働者側を優先する傾向があります。
❌ 社会保険(BHXH)の追徴
社会保険の加入義務や算定基礎は、契約種別および契約上の支給項目と直接関係します。
❌ 政令12/2022/NĐ-CPに基づく行政罰
違反の程度により、罰金は400万~7,500万VNDとなる可能性があります。
6. 適切な契約種別の選定ガイド
A. ベトナム進出直後の企業の場合
・最初の1~2年は有期契約で運用
・2回の評価サイクル後、中核人材を無期契約へ切替
B. 日本企業の場合
「適材適所」のスリムな運営を行う特性を踏まえ、ベトナムの専門家は以下を推奨します。
・契約書内で職務内容(Job Description)を明確に分離・記載
・中核人材には無期契約を活用
・有期契約を繰り返す場合は、合理的理由を説明できる資料を保管
C. プロジェクト型人材・季節的業務人材の場合
・12か月未満の有期契約を締結
・業務の「一時的」性質を明記
・恒常的業務に短期契約を濫用しない
7. 監査対応のためFDI企業が保管すべき契約関連書類
労働監査当局による必須書類:
・二言語雇用契約(ベトナム語版を含む)
・賃金・職位変更時の契約付属書(アドエンダム)
・試用合意書
・職務記述書
・試用期間中の評価シート
・賃金台帳、勤怠記録、残業(OT)申請・記録
・契約種別変更に関する記録
上記のいずれかが欠けると、検査時にリスクが高まる可能性があります。
契約種別を正しく区別することは、FDI企業の安全運営につながる
適切な雇用契約を選定することは、企業にとって次の第一歩です。
✔ 労働紛争の回避
✔ ベトナム法令の遵守
✔ 監査時の処分リスク低減
✔ 透明性が高くプロフェッショナルなHR環境の構築
規律と遵守が重視されるFDI企業、特に日本企業にとって、初期段階から標準化された契約プロセスを構築することが、持続的運営の鍵となります。
企業は、Back Officeのアウトソーシングサービスを活用し、あらゆる契約種別を標準化してリスクを効果的に管理することも検討できます。





