ベトナムの季節・短期雇用規定:FDI企業が知っておくべきポイント
Date: 2026.04.06
ベトナムの季節・短期雇用規定:FDI企業が知っておくべきポイント
ベトナムはFDI企業にとって大きな可能性を持つ市場であり、特に日本企業では、製造・小売・物流・イベントなどで季節要因や短期プロジェクトに応じた雇用ニーズが高い傾向にあります。しかし、労働・傷病兵・社会問題省(MOLISA)の監査報告によれば、季節・短期雇用の運用に関する違反は、FDI企業が操業初年度に犯しやすい代表的なミスの一つとされています。
法令に則って運営しリスクを回避するためには、企業は2019年労働法および政令145/2020/NĐ-CPに基づく季節・短期雇用に関する規定を正しく理解する必要があります。

1. 以前の「季節労働」とは?現在はどのように規定されているか?
2021年以前、ベトナム法には「12か月未満の季節契約という概念がありました。
しかし、2019年労働法により「季節労働(lao động thời vụ)」という概念は廃止されました。
現在、雇用契約は次の2種類のみです:
・有期雇用契約(最長36か月)
・無期雇用契約
「季節」という用語はなくなったものの、法的要件を満たす場合、企業は短期契約を締結することが可能です。
2. FDI企業はいつ短期契約を締結できるのか?
政令145/2020/NĐ-CPおよびMOLISAのガイダンスによれば、企業は次の場合に短期契約を締結できます:
✔ 業務が一時的で、恒常的ではないこと
例:短期プロジェクト、生産の繁忙期、イベント、在庫棚卸など。
✔ 業務が一定期間内に終了し得ること
安定的・長期的な性質を持つポジションに短期契約を適用することは推奨されません。
✔ 職位により試用期間が180/60/30日を超えないこと
(2019年労働法第25条による)
3. 1か月未満の契約でも書面締結が必要
これはFDI企業に多い誤解です。
2019年労働法第14条によれば:
“口頭・書面を問わず、すべての労働上の合意は労働契約とみなされる。”
2021年以降:
・1か月未満の契約であっても、(一部の特例を除き)書面による契約締結が必要です。
・契約書には、権利・義務、賃金、労働時間、社会保険制度(該当する場合)を明記する必要があります。
日本企業がこの手続きを省略してしまうケースが多く、紛争発生時に大きなリスクとなります。
4. 季節・短期労働者は社会保険(BHXH)に加入する必要があるか?
現行法の規定では:
1か月以上の労働契約を締結する労働者は、BHXH(社会保険)、BHYT(健康保険)、BHTN(雇用保険)への加入が義務付けられています。
また、2025年7月1日より(2024年社会保険法施行)、有期・無期の労働契約で1か月以上勤務する労働者は、強制社会保険加入の対象となります。
(2025年7月1日以前は、1~3か月未満の契約ではBHXH・BHYTのみ、3か月以上の契約でBHXH・BHYT・BHTNが必要でした。)
一方、1か月未満の契約の場合はBHXH強制加入の対象外となりますが、企業は以下を含む労務上の義務を引き続き履行しなければなりません:
+ 労働安全の確保
+ 通常どおりの賃金・手当の支払い
+ 労働災害発生時の支援
FDI企業は違反を避けるため、慎重な確認が必要です。
5. 季節・短期労働者の労働時間および残業(OT)規定
多くのFDI企業が「短期雇用なら残業が多く可能」と誤解していますが、法律上は通常の労働者と同様に適用されます:
・残業上限:月40時間
・年200時間(特定業種では年300時間)
・労働者本人の同意が必要
・残業賃金は150%・200%・300%で正しく計算
2023~2024年の労働監査では、FDI企業の違反の35%以上が残業計算ミスまたは上限超過に関連していると報告されています。
6. 季節・短期契約の終了(解約)に関する規定
企業は以下を遵守する必要があります:
・一方的に契約を終了する場合、法定の事前通知を行うこと
・賃金、有給休暇、各種手当を全額精算すること
・社会保険手帳(加入している場合)を返却すること
・懲戒手続きは通常の労働者と同様に適用されること
契約終了に関する誤解が原因で、多くのFDI企業が労働紛争で敗訴しています。
7. 季節・短期雇用の労務管理書類 ― 監査で最初に求められる資料
企業は以下の書類を完備する必要があります:
・労働契約書
・試用契約書
・個人情報・身分書類
・勤怠記録
・残業同意書
・賃金・賞与規程
・労働安全衛生(ATVSLĐ)関連書類
・労働者名簿(労働・傷病兵・社会問題局への報告用)
これらは、操業開始後1~2年以内に労働監査で最初に確認される書類群です。
FDI企業は、リスク回避のため季節・短期雇用を法令どおりに管理する必要があります
短期雇用であっても、ベトナムの季節・短期労働は法律により厳格に規制されています。
FDI企業、特に日本企業は以下を徹底すべきです:
✔ 正しい契約種類を適切なタイミングで締結する
✔ 義務がある場合、社会保険を完全に履行する
✔ 残業・労働時間を透明に管理する
✔ 監査に備えて書類を適切に保管する
✔ Back Office・HR・法務サービスを活用しミスを最小限に抑える
初期段階からコンプライアンス体制を整えることで、安定した事業運営、罰則回避、行政機関からの信頼維持につながります。





